「合同会社を株式会社に組織変更する」ためには法務局への登記申請が必要です。
自分でやるのはなんだか難しそうと思うかもしれませんが、そんなことありません。
経費節約のためにも自分でやってみましょう!
前回に引き続き、自分で簡単に「合同会社を株式会社に組織変更する」方法についてのお話です。
大きく分けると作業は2つだけ!
1つ目は、ネットから官報公告の申し込みをする。
2つ目は、法務局へ登記申請書の提出をする。
このたった2つだけです。
なんだか簡単そうに思えてきましたよね。
順番としては、官報公告→登記申請となります。
それでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。
官報公告の申し込み
官報なんて読んだことないという人も多いと思いますが、官報は国が発行している新聞のことです。
合同会社を株式会社に組織変更することを広く世の中に伝えるために、その旨を官報に掲載する(=官報公告)必要があるのです。
こんなのです↓
官報に掲載すると言っても難しいことではありません。
ネットから申し込んで、それですべて完結します。
まずネットで「官報公告 申込み」と検索してみてください。
いくつも官報公告の取扱業者が出てきます。
その業者のネットページから申込をするだけです。
今回、私は「兵庫県官報販売所」を利用しました。
どこに頼んでも掲載料金は一緒です。
申し込みの流れは以下のとおりです。
①「法定公告」→「組織変更公告」を選んでWEB申込み
②公告原稿の入力をして申込完了
③申し込み後に、原稿の最終確認と振込案内のメールが届く。
④最終確認のメールを返信して、振込を完了させる。
⑤1週間から10日くらいで官報に掲載される。
⑥業者から掲載された官報が郵送される。(後の登記申請で使います)
注意点としては②の公告原稿です。
申込フォームの掲載例を参考にすると行数がかさんで費用が余分にかかることがありますので、なるべく短くしましょう。
こんな感じで十分です↓
-------------------------
当社は、株式会社に組織変更することにいたしました。
この組織変更に異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。
兵庫県伊丹市○○○○○○○○
合同会社○○○○
代表社員 ○○○○
-------------------------
本文と住所の間には掲載日が入るのですが、自分で入れなくても業者が日付を入れてくれるので、気にしないで大丈夫です。
これで、9行の掲載となり費用は32,303円でした。
1行増えると3,000円くらいの増額となるので気を付けましょう。
法務局への登記申請
法務局への登記申請は必ず、官報公告から1か月以上たったあとに行います。
(債権者が異議を申し立てられる期間として1か月以上確保する必要があるため)
とは言っても、1か月間何もせずに待つのではなく、申請書類をすべて準備してあとは提出するだけという状態にしておきましょう。
まず、提出が必要な書類を羅列してみます。
①合同会社の組織変更による株式会社の設立登記申請書
②組織変更計画に関する総社員の同意書
③組織変更計画書
④定款
⑤代表取締役の選定に関する書面
⑥取締役、代表取締役の就任承諾書
⑦公告及び催告をしたことを証する書面
⑧登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書
⑨合名会社の組織変更による解散登記申請書
⑩印鑑届書
⑪本人確認証明書
結構多いですが、ネット上にフォーマットがあるのでさくっと作れるものばかりです。
1つずつ見ていきましょう。
①合同会社の組織変更による株式会社の設立登記申請書
株式会社を作るための申請書です。
法務局のHPにWordファイルがあるので、それを基に作ります。
こんな感じの申請書です。
記載例が法務局のHPに載っているので、同じように作ればOK。
他の書類もほとんどがこの記載例の通りに作っていきますので、一通り読み込んでおきましょう。
「登記すべき事項」は別紙を作成する必要があるので忘れないようにしましょう。
これも「別紙の例」として記載例に載っているので、コピペして修正でOKです。
完成したらホッチキス止めして、これに3万円の収入印紙を貼り付けて申請します。
印紙は消印しないようにしましょう。
また、印鑑(※新しい印鑑を使用)を押す場所(※契印も必要)にも注意しましょう。
②組織変更計画に関する総社員の同意書
これも①同様、Wordファイルのフォームを使って作ります。
こんな感じの書類です。
③組織変更計画書
これも①同様、Wordファイルのフォームを使って作ります。
こんな感じの書類です。
「定款で定める事項」については、④の定款を利用します。
④定款
定款は法務局HPの株式会社設立の記載例に載っている定款が参考になります。
ただ、不要な事項も結構含まれているので、シンプルな日本公証人連合会の記載例と見比べながら簡略に作ることをおススメします。
②~④の書類をホッチキス止めしてまとめます。
契印を忘れないようにしましょう。
ここで1つ注意点があります。
①の申請書に「添付書類」を記載する場所があるのですが、「定款 1通」の下に「定款は組織変更計画書の記載を援用する」と記載することにより、④の定款を代用することができます。
記載例にもその旨が小さい字で書いてますので、見落とさないように注意が必要です。
⑤代表取締役の選定に関する書面(互選書)
これも①同様、Wordファイルのフォームを使って作ります。
こんな感じの書類です。
日付は組織変更の効力発生日以降にします。
なお、代表取締役の選任方法は定款で「取締役による互選」と定めておく必要があります。
⑥取締役、代表取締役の就任承諾書
これも①同様、Wordファイルのフォームを使って作ります。
こんな感じの書類です。
取締役分と代表取締役分はそれぞれ別々に作成します。
⑦公告及び催告をしたことを証する書面
以下2つが必要です。
・官報の原本
これは、官報掲載後に業者から郵送される官報をそのまま使います。
・債権者に対する催告書(債権者の人数分)
これも①同様、Wordファイルのフォームを使って作ります。
こんな感じの書類です。
原則的には債権者すべてに対して催告書を出す必要があるのですが、実務的には少額の債権であれば個別催告を省略するようです。
また、取引先として重要かどうかという視点も個別催告の判断基準となるようです。
なお、異議を述べた債権者がいないことを示すために、①の申請書の添付書類欄に「異議を述べた債権者はない」と記載します。
⑧登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書
これも①同様、Wordファイルのフォームを使って作ります。
こんな感じの書類です。
金額ですが、③はゼロ円とします。
(というか、ゼロ円ではないパターンは難しいのでやめましょう)
①と②は効力発生直前の資産の額、負債の額を記載します。
これはざっくりで大丈夫。
③がゼロ円なら、結局は効力発生直前の資本金の額が課税標準になるからです。
⑨合同会社の組織変更による解散登記申請書
これも①同様、Wordファイルのフォームを使って作ります。
こんな感じの書類です。
ホッチキス止めして、これに3万円の収入印紙を貼り付けます。
印紙は消印しないようにしましょう。
また、印鑑(※新しい印鑑を使用)を押す場所(※契印も必要)にも注意しましょう。
⑩印鑑届書
新しい印鑑を登録するための届出書です。
法務局のHPに、記載例と印鑑届出書のExcelフォームが載ってますのでこれを使いましょう。
こんな感じの書類です。
届出書の作成には新しい印鑑が必要となります。
あらかじめ、株式会社に変更後の新たな社名で法人印を作成しておきましょう。
安いものなら5,000円以下で3本セットが作れます↓
⑪本人確認証明書
以下2つの証明書が必要です。
(代表取締役1名だけの会社の場合には、1つで大丈夫です)
・代表取締役の個人の印鑑証明
…マイナンバーカードを持っていれば、コンビニで簡単に取ることができます。
・代取ではない取締役の免許証などのコピー
…コピーには「原本と相違がない。」旨の記載と記名押印が必要です。
以上①~⑪が申請に必要な書類一式となります。
書類の数が結構多いので、ミスに注意しながら作成しましょう。
登記申請にあたっての注意点
以下の事項に特に気を付けましょう。
・全ての書類の1ページ目左上に捨印を押しておく!
補正があった場合に訂正が楽になります。
・法務局への申請は、組織変更の効力発生日(組織変更計画書に記載)以降に行う!
それぞれの書類の日付の前後関係に注意して作成しましょう。
・法務局の書類フォームをそのまま使う場合は文字の修正が必要!
法務局のWordファイルのフォームは「合名会社」を例にして作られているので、「合名会社」の文字をすべて「合同会社」に修正するのを忘れないようにしましょう。
他の部分も、自社の申請内容に適合するように適宜修正して書類を作っていきましょう。
申請書の提出は郵送でOK!
書類作成が完了したら、あとは郵送で提出するだけです。
前述の書類をすべて封筒に入れて、管轄の法務局へ郵送しましょう。
もし不備があれば電話で連絡してくれます。
なので、登記申請書には必ず連絡先の電話番号を書いておきましょう。
書類不備の場合には、追加書類の提出が必要になったりしますが、それも郵送で対応可能です。
不備がなければ、提出から1~2週間程度で登記が完了します。
登記完了の連絡は特にしてくれないのですが、完了したかどうかを知るための良い方法があります。
それは、国税庁の法人番号公表サイトで自社を検索する方法です。
検索して株式会社に変わっていれば、登記も完了しているということです。
登記が完了すれば、登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)を法務局(支局でも可)で取得することができます。
また、ネットでも登記情報は確認することができます。
登記情報を見るだけならネットの方が便利ですが、銀行などの社名変更手続きの際に謄本原本が必要となることがありますので、あらかじめ必要な部数を把握しておいてまとめて法務局で取得しましょう。
組織変更後のその他の手続き
株式会社への登記変更が完了した後は、各種変更手続をしていきます。
税務署、年金事務所、銀行、保険、車などなど、あらゆる名義を株式会社に変更していく必要があるので、これが結構面倒くさかったりします…。
終わりに
合同会社の組織変更登記は、他の登記(社員変更や本店移転など)に比べると必要書類の数が多いのでその分時間はかかりますが、書類フォームはすべて用意されているので意外と簡単に作れてしまいます。
コピペを駆使していけば、半日もあればすべての書類が作れるでしょう。
たとえ提出書類に不備があっても、法務局の指示に従って修正していけば最後は何とかなります。
自分でやれば半日でできてしまう登記作業ですが、専門家に依頼すると10万円近い報酬を支払う必要があります。
経費削減のために、自分で登記をやってみてはいかがでしょうか。